困りごと・悩みごと 知りたいことQ&A

テーマ: 概説

  • Q. 認知症には「中核症状」と「周辺症状」とがあると聞きましたが、その違いは何ですか?

    A. 認知症の症状のうち、脳の細胞が破壊されることによって、その脳細胞が担っていた機能が失われたものを「中核症状」とよびます。たとえば、新しいことを記憶するときに必要な海馬の細胞が減少すると新しいことが記憶できなくなる、といったことです。これに対して、中核症状のために外界で起こっていることに関する理解がゆがみ、そこから生じるストレスによって生じてくるさまざまな精神症状や日常生活を困難にする行動のことを「周辺症状」とよびます。周辺症状は、中核症状の程度、本人が持っている素質、現在の環境、心理的な状況などによってさまざまです。徘徊や妄想は代表的な周辺症状です。
  • Q. 認知症になった本人は、自分が認知症だという自覚をもっていますか?

    A. もっています。自分はもの忘れをしないと頑なに言い張る人がありますが、これは、認知症の人のもの忘れは、「忘れている」のではなく「覚えていない」ために起こるからです。健康な人がもの忘れに気づくのは、人から指摘されて、「あっ、しまった!」と思い出すからです。アルツハイマー病などの場合、指摘されても、脳の中に記憶の痕跡がないので、忘れたというより、そんな話は聞いていないという感じをもちます。こうした認知症の方でも、「では、あなたの頭は今までと変わりないですか?」と質問すると、「頭が悪くなった」「バカになった」などと答える人がたくさんいます。細かく分析はできませんが、何かが頭の中で起こっているという自覚はあるのです。
  • Q. 年をとれば誰でも認知症になってしまいますか?

    A. 認知症というのは、正常な加齢変化とは異なる病態を指します。したがって、年をとれば誰でも認知症になるわけではありません。認知症は、あくまでも、病気やけがの結果起こる病態ですから、90歳になっても100歳になっても認知症にならない人はなりません。ただし、認知症の有病率は年をとるほど高くなり、85歳以上になると4人に1人は認知症といわれます。したがって、90歳前後になって認知症と診断されても、軽度の場合は、普通の老化現象と大きな変わりがないように見えることもあります。
  • Q. 認知症は遺伝しますか?

    A. 認知症を引き起こす病気の大部分はいわゆる遺伝病ではありません。しかしながら、直系の血族にアルツハイマー病の人がいると、そうでない人よりアルツハイマー病のリスクが高くなります。同様に、脳梗塞や、脳出血、糖尿病、高血圧などの病気の多い家系では、そうではない家系に比べて、脳脳血管性認知症のリスクは高くなります。癌でも同様ですが、遺伝子によって発症の有無が決定される病気ではないけれども、病気になりやすい体質は遺伝するというところでしょう。この他、非常に稀ですが、家族性アルツハイマー病、ハンチントン病などのように、その遺伝子を持っていれば必ず発症する遺伝病もあります。
  • Q. 認知症になりやすい気質はありますか?

    A. アルツハイマー病のリスクファクターとして、病前性格、食物、生活習慣、知的能力などが盛んに研究されています。しかしながら、確定的なエビデンス(科学的な証明)を伴うリスクファクターとしてあげられているのは、女性であること、高齢であること、アポリポタンパクとよばれるタンパク質の3種類ある遺伝子型のうちのある遺伝子型をもつことだけです。したがって、病前の気質とアルツハイマー病の発症の間に因果関係は証明されていません。性格、気質といったものは変えることのできるものではありませんから、多少問題があっても、自分の気質と上手に折り合い、付き合っていこうと考えたほうが建設的です。
  • Q. 認知症は突然発病するのですか?

    A. 認知症というのは、脳の神経細胞が死んでしまったり、機能低下に陥ってしまったために、いったん発達した精神の機能が低下してしまう状態をいいます。つまり、認知症というのは病気の名前ではなく、さまざまな病気によって起こる症状群のことです。これに対して、アルツハイマー病、脳血管性認知症、前頭側頭型認知症というのは、認知症という症状の原因になる病気の名前です。認知症のなかには、アルツハイマー病や前頭側頭型認知症のように、知らないうちに始まり、少しずつ進行していく病気もあるし、脳出血や脳梗塞後の認知症のように、急に発症する認知症もあります。もっとも、脳血管性認知症のなかにも、徐々に始まり、ゆっくり進行するものもあるので一概にはいえません。
  • Q. 認知症はどれくらいの確率でなりますか?

    A. 65歳以上の有病率は3〜8%です。認知症の有病率は、年齢とともに増加すると考えられています。65歳から69歳では1.1%、その後、5歳刻みの年齢階級が上がるごとに有病率は倍増し、80〜84歳では11.0%、85歳以上では20.9%という数字があげられています。以上は、1992年の大塚俊男先生、柄澤昭秀先生、松下正明先生の論文に依っているので、85歳以上の有病率はもっと増えていると考えられます。しかしながら、この論文以降、この論文以上に科学的な根拠のしっかりした研究がありません。
  • Q. 認知症は精神病の一種ですか?

    A. どういう病気を精神病と呼ぶかによって答えが変わります。精神機能に障害が起こる病気を広義に精神病と呼ぶなら、認知症も精神病の一種です。一方、統合失調症や気分障害(躁うつ病)などを、狭義の精神病と呼ぶ場合、認知症は精神病ではありません。ちなみに、WHOによる国際診断基準は、統合失調症や気分障害のような狭義の精神病、PTSDやパニック障害などのいわゆる神経症、認知症のような脳器質性精神障害、人格障害、発達障害などを「精神及び行動の障害」として一括しています。
  • Q. 認知症はどのくらいのスピードで進行しますか?

    A. 認知症の原因となる病気にもよりますし、個人的な状況にもよります。進行のパターンも原因疾患によってさまざまです。アルツハイマー病の場合、一般にはスロープを落ちるようになだらかに進行していきます。脳血管性認知症の場合は、比較的安定した時期を挟んで、階段を下りるような進行をするといわれています。同じアルツハイマー病でも、症状の進行の速さは個人差が大きいものです。診断がついてから2、3年で、自分のことも家族のことも何もわからなくなる人もありますし、5年、10年が経過しても、あまりひどくならない人もいます。アルツハイマー病の場合、一般的には早く発症するほうが進行が速いといわれますが、そうでもない場合が珍しくありません。
  • Q. 認知症で死んでしまうことはありますか?

    A. 認知症の原因になる病気でもっとも多いのはアルツハイマー病です。アルツハイマー病は、10年、20年という経過で、ゆっくりと脳が萎縮していき、その過程でまずは精神の機能が冒され、やがて身体機能も冒されていきます。アルツハイマー病に次いで頻度の高い脳血管性認知症でも、進行すると身体機能が障害されます。しかしながら、いずれの場合も、認知症の原因疾患そのものが直接、死をもたらすわけではありません。認知症が進行すると、原因疾患の如何によらず、一般に、食べ物を飲み込むことがうまくできなくなり、食物が肺に行ってしまって誤嚥性肺炎という状態を繰り返すようになります。こういう状態を経て感染症で亡くなるのが一般的な過程です。
  • Q. 認知症ともの忘れの違いは何ですか?

    A. 世界保健機構(WHO)が決めている病気の国際疾病分類(ICD-10)は、認知症の症状として「記憶、思考、見当識、理解、計算、学習能力、言語、判断を含む多数の高次皮質機能障害」をあげています。つまり、認知症は単なるもの忘れではなく、時間や場所についての見当識や、新しい事柄を学んで身につける能力、抽象的な思考力、物事を要領よく計画的に遂行する能力などさまざまな精神機能が障害された状態を指します。もの忘れだけについてみても、認知症のもの忘れ、認知症以外の病的なもの忘れ、年をとるために起こる生理的なもの忘れは、それぞれ性格が違っています。
  • Q. 現在、日本の認知症の人は何人いますか?

    A. 厚生労働省が2012に発表した推計では、約305万人とされています。これは、65歳以上の高齢者のおおよそ1割にあたります。2015年は345万人、2020年は410万人、2025年には470万人に達すると見込まれています。
  • Q. アルツハイマー型認知症とはどういう病気ですか?

    A. アルツハイマー型認知症は、脳の中に特殊なタンパク質が貯まり、脳の神経細胞が死んでしまう病気です。脳の神経細胞が死んでしまうために、脳が本来の機能を果たせなくなり、認知症が起こります。何年もかけて潜在性に始まり、やがてもの忘れなどの症状が明らかになり、その後はスロープを降りるように進行していきます。記憶、思考、判断などの精神機能だけでなく、身辺自立の機能も徐々に侵され、進行すると、歩行などの身体運動機能が障害され、最終的には寝たきりになって、食物を飲み込む力がなくなり、誤嚥性肺炎を繰り返して死に至ります。
  • Q. 認知症になる原因は何ですか?

    A. 認知症は、脳の細胞を破壊する病気や外傷を原因として起こります。アルツハイマー病、前頭側頭変性症、レビー小体病など、脳細胞が何らかの原因で死んでいく病気(変性疾患)、脳の細胞を養う血流が途絶えてしまう脳梗塞や脳出血のような病気、エイズ、梅毒等、脳炎を起こすような細菌やウィルス感染症、クロイッツフェルド・ヤコブ病のように、プリオンと呼ばれる特殊なタンパク質を媒体とした感染症、脳腫瘍、アルコールや薬物の乱用、交通外傷など、その他、脳の細胞や細胞の線維を障害するあらゆる病気や外傷が認知症の原因となり得ます。
  • Q. 脳血管性認知症とはどういう病気ですか?

    A. 脳血管性認知症は、脳の血管障害の結果、栄養や酸素の供給を絶たれた脳細胞が死んでしまうことによって起こる認知症の総称です。血管障害には脳梗塞、脳出血、動脈硬化などさまざまなものがあり、血管障害が脳のどの部分に起こるかなどによっても症状が異なるため、一口に脳血管性認知症といっても症状、経過に大きなバラエティーがあります。アルツハイマー型認知症と比較して、症状の動揺が大きいこと、安定した時期を挟みながら階段状に進行する場合があること、能力障害にばらつきがあること(まだら認知症)、人格変化を伴いやすいこと、神経症状の合併が多いことなどの特徴があります。
  • Q. 認知症にはさまざまな種類があるそうですが……。

    A. 認知症とは、脳の細胞が損傷されることにより、正常に発達していた精神機能が全般的に障害され、社会生活を困難にする程度まで低下した状態を言います。つまり、病名ではありません。認知症を引き起こす病気には、アルツハイマー病、レビー小体病、前頭側頭変性症、脳血管障害などさまざまな病気があります。
  • Q. レビー小体型認知症とはどういう病気ですか?

    A. 1976年以降、日本の小阪憲司博士らの報告によって注目され、1995年に開催された国際ワークショップで知られるようになった病気です。40歳前後から発症します。主要な症状として、①進行性の認知機能障害(その過程では注意の障害や意識水準の動揺などによって認知機能そのものも動揺しやすい)、②リアルな幻視、③特発性のパーキンソン症状があげられます。この他、抗精神病薬で副作用が出やすいこと、夜間に夢でうなされる、しばしば転倒する、一過性の意識障害、妄想などが見られれば診断の補強になります。パーキンソン病と類縁の疾患です。
  • Q. 認知症を引き起こす病気にはどのようなものがありますか?

    A. 以下のような分類により、さまざまな原因があります。 [変性疾患]アルツハイマー病、前頭側頭変性症、レビー小体病、ハンチントン病、パーキンソン病など脳の細胞が死んでいく病気 [血管性認知症]脳梗塞、脳出血、動脈硬化などが原因で、脳の細胞に栄養や酸素がいきわたらず、その結果脳の神経細胞が死んでしまう病気 [感染症]梅毒、エイズ、クロイツフェルド・ヤコブ病など [その他]アルコールその他の物質乱用、頭部外傷
  • Q. ぼけと痴呆と認知症は意味が違いますか?

    A. 「ぼけ」というのは正確に定義された医学用語ではありません。したがって、意味も不明確で、人によっては、認知症になったことを「僕の親がぼけた」と言う人もいますし、単に年をとって精神機能が老化してきたことを指して、「このごろすっかりぼけてしまって」という人もいます。この他、「ぼけ」と言う言葉は、漫才の「ぼけとつっこみ」のように、老化や認知症とは全く関係のない場面で使われることもあり、そのニュアンスは使われる地域によっても異なっているようです。一方、認知症というのはあくまでも医学用語で、きちんと定義されており(→「認知症の定義を教えてください。」の項参照)、日本中どこに行っても同じ意味です。
  • Q. 認知症の定義を教えてください。

    A. 認知症というのは、医学用語で、一度発達した精神機能が脳の病気やケガによって全般的な低下を来たし、社会生活や家庭生活に支障を来すようになった状態を指します。これに対して、精神機能の発達が生まれつき、あるいは乳幼児期に止まってしまえば「発達障害」、特に、知的な側面の発達が止まれば「知的障害」と呼ばれます。知的障害の人が年をとっても、認知症と呼ばれるわけではありません。したがって、認知症は病気の名前ではなく、症状の名前です。アルツハイマー病、レビー小体病、前頭側頭葉変性症などは、認知症の原因となる病気です。脳梗塞や脳出血といった病気が原因で起こる認知症は、脳血管性認知症と呼ばれます。

このQ&Aは、あくまでも一般的な参考用として掲載しています。個別具体的なケースについては、専門家などの助言を受けることをお勧めします。